猫の肥大型心筋症

今回は猫の肥大型心筋症の症例をご紹介します。

上の写真は7歳のスコティッシュホールドの猫ちゃんの心臓超音波検査の画像です。

当院にはペットホテルのため来院されましたが、身体検査で明らかな心雑音と不整脈が聴取されたので、ホテル中に心臓の精密検査を行うことになりました。

超音波検査で心臓を輪切りにした断面を観察すると心筋壁が厚くなっていることが分かりました。

正常な猫ちゃんの心筋壁は6mm以内ですが、この子は8.6mm以上もあり、肥大型心筋症であることが分かりました。

また、心臓を横から観察すると、左心室から大動脈に流れる通り道が狭くなり(流出路狭窄)、同時に僧帽弁逆流が起きていることが分かりました(左図)。


このような状態を放置しておくと、左心房という部屋に圧力がかかり、肺水腫などのリスクがあります。

特に猫ちゃんでは血栓が形成され、大動脈に詰まる大動脈血栓塞栓症という病態につながる危険性があります。

この病気は突然発症し、激しい痛みで苦しんだ末に亡くなってしまったり、生還しても指先が壊死するなど、非常に恐ろしいものです。

 

今回の症例は心拍数がとても早く、それに伴う逆流と流出路狭窄が問題であると考えられたので、ご家族とも相談し、βブロッカーという薬で治療を始めることになりました。

治療前

治療後


治療後、上の写真のように狭窄と逆流が緩和され、心臓も落ち着いて動けるようになりました。

 

今回の症例のように、猫の心臓病は症状がほとんど見られないにも関わらず病気が進行している事が多いです。

 

そのような状態を知らないまま、ホテルに預けたりシャンプーを行ったりすると、興奮による心不全の急性悪化から、突然死する可能性があることも知っておいて頂きたいです。

 未然に防ぐには病院で聴診してもらったり、定期的な健康診断をする事が大事ですね。