今回は肥満の猫ちゃんが罹りやすい病気のひとつ、肝リピドーシス(脂肪肝)の症例をご紹介します。
写真は嘔吐と食欲不振で他院を受診し、1週間程入院したが治らないとの事で当院を受診した10歳の雄猫ちゃんです。
来院時には黄疸(皮膚や目の粘膜が黄色く染まる)がみられ、食欲は全く無い状態でした。
血液検査では肝酵素の異常高値がみられ、原因の精査のためレントゲンと超音波検査を行いました。
超音波検査では腫瘍などの明らかな異常は観察されず、肝炎やリンパ腫、肝リピドーシスが疑われたため肝臓の細胞診検査を行うことになりました。
肝臓の細胞診は超音波ガイド下で無麻酔で行うことができる検査です。
写真のように肝細胞が採取できれば診断の助けになり、非常に有益な検査方法です。
この猫ちゃんは細胞診検査で肝リピドーシスと診断できました。
肝リピドーシスの治療は適切なタンパクとカロリーを積極的に与えることが重要で、強制的に食べさせる必要があります。しかし、強制給餌を嫌がる猫ちゃんが多く、今回の猫ちゃんも写真のように咽頭-食道チューブを設置して積極的な栄養供給を行うことにしました。
この方法であれば家族の方が自宅で食事を与えることも容易で、長期入院もしなくて良くなります。結果的に、この猫ちゃんは2日だけ入院し、あとは通院治療となりました。
2週間程で黄疸はほぼ消失し、少しづつ自分でごはんを食べられるようになりました。3週間後には今まで通りドライフードもしっかり食べられるようになり、チューブを外すことができました。
肝リピドーシスは肥満の猫ちゃんが罹りやすい病気で、腸炎や膵炎、糖尿病など様々な病気が原因で食欲不振に陥った場合に引き起こされます。したがって、基礎疾患をしっかりと精査することも重要です。今回の猫ちゃんは膵炎が引き金になっていたと考えられました。
他にも肥満に関わる猫ちゃんの病気は多く存在します。日頃の食生活を注意すれば防ぐこともできますから、肥満の猫ちゃんがお家にいる方は食生活を見直してみてはいかがでしょうか?