今回ご紹介する症例は耳道(耳の中)に腫瘍が出来てしまった10歳の猫ちゃんです。
1年程前から慢性的な耳漏(耳垂れ)に悩まされていましたが、細菌性外耳炎として治療を続けており、なかなか治らないとのことで当院を受診されました。
外貌からは腫瘤は確認できませんが、黒褐色の悪臭のある耳漏が蓄積していました。
このような耳漏は細菌性外耳炎やマラセチア性外耳炎、ヒゼンダニ症(耳ダニ)などの原因が一般的で、これらの病気と鑑別する必要があります。
耳の奥を観察するとイラストのように水平耳道の手前に腫瘤が形成されていることが分かりました。
同時に細菌感染も認められましたが、本例の場合は腫瘤が原因で慢性的な外耳炎を起こしていると考えられました。
治療は外側耳道切除術で腫瘤を切除することなりました 。
写真のように水平耳道の手前で穴を塞ぐような暗赤色の腫瘤が確認できました。
病理検査で腫瘍は「耳垢腺癌」と診断されました。
術後は写真のように経過良好で、水平耳道も確認でき、清潔な状態を保つことができています。
猫の耳垢腺癌は比較的多くみられる腫瘍で、悪臭のある耳漏や痒みなど外耳炎と同様の症状が認められます。
腫瘍が鼓室胞まで浸潤している事が疑われる場合は、鼓室骨切除や全耳道切除が必要となりますが、本例の場合は幸い垂直耳道に形成された腫瘍なので、耳道の一部を切除することで治療することができました。
慢性の外耳炎が耳垢腺癌の素因とも考えられるので、日頃から外耳炎を繰り返す子や耳垢の多い猫ちゃんは定期的に動物病院でチェックしてもらうと良いでしょう。