猫の角結膜炎は比較的多い病気で、ほとんどの場合は感染症が関与しています。
症例1の猫ちゃんは1ヶ月前から結膜炎の治療を他院で行っていましたが、角膜も白くなってきたため、当院を受診されました。
初診時の写真では、結膜が赤く腫れ上がり、角膜も慢性炎症により白く肥厚し、瞳孔も観察できません。
この症例は結膜スワブを採取して、病原体の特定のためPCR検査を行ったところクラミジアが検出されました。クラミジアは猫ちゃんの結膜炎で一般的にみられる病原体ですが、これほど重度な角膜炎は通常起こさないので、猫ヘルペスウイルスとの混合感染を疑いました。
そこで本例は抗生物質と抗ヘルペスウイルス薬を併用し治療したところ、3ヶ月ほどで大きく改善されました。
症例2は角膜表面に黒いものが着いているという主訴で来院されました。
写真のように角膜表面に黒い痂皮様の病変がみられます。
これは角膜黒色壊死症という病気で、明確な原因はわかっておらず、角膜への慢性刺激や猫ヘルペスウイルス感染が要因と考えられています。
黒い病変部位が剥がれ落ちると痛みを伴う場合があるため、手術をすすめる先生もいます。しかし手術による治療は再発率も高いとされ、手術痕が消えるまでの時間も長期間有することを考えると、当院では点眼治療や抗ヘルペス薬を用いた内科治療を優先に考えています。
本例は点眼治療のみで自然に壊死部位が脱落し、2ヶ月後にはほぼ正常に回復しました。