アトピー性皮膚炎は、主に環境中のアレルゲンが原因で発症する皮膚病です。
犬に多い病気で、多くの場合は生後6ヶ月〜3歳という比較的若い年齢で発症します。
柴犬やシーズー、ボストンテリア、フレンチブルドッグなどの犬種は、遺伝的にアトピー性皮膚炎を発症しやすいことで知られています。
症状
強い痒みと赤みを特徴とし、特に目や口の周り、耳、四肢に多く症状がでます。
アトピー性皮膚炎に加えて、他のアレルギー(食物アレルギー、ノミアレルギーなど)や細菌、マラセチアなどによる二次感染が併発するとさらに症状が悪化します。外耳炎を併発していることも多く特有の臭いを発します。
犬や猫のアトピー性皮膚炎を直接「確定診断」する方法はなく、他の痒みの強い皮膚病を一つ一つ除外していくことで診断します。
治療について
アトピー性皮膚炎は完治することは難しく、痒みのコントロールが治療の主体となります。
痒みをコントロールするために、免疫抑制剤(ステロイド、シクロスポリンなど)や痒み止め(オクラシチニブ)、抗ヒスタミン薬などの内服を行います。
また、スキンケアとして自宅での薬用シャンプーや保湿、食事管理が重要となります。
根本治療として減感作療法が挙げられますが、効果はさまざまです。
当院での治療例
写真の柴犬は10歳の女の子です。若い頃からアトピー性皮膚炎があり時々内服治療をしていましたが、うまくコントロール出来なくなり当院を受診されました。
初診時は首周りに重度の紅斑と脱毛があり、強い痒みが出ていました。
血液検査など行いましたが、皮膚病を悪化させるような基礎疾患はなく、単純にアトピー性皮膚炎の治療が不十分であると判断しました。
飼い主様ともご相談のうえ、治療費も考慮した結果、本例はステロイド投与に薬用シャンプーと保湿ケアを併用して治療していくことにしました。
写真のようにステロイド投与単独で3ヶ月後には発毛もしっかりして、良好にコントロールされました。
アトピー性皮膚炎の治療薬には代表的なものにステロイドやシクロスポリン、オクラシチニブ(アポキル)がありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。それらをよくご説明のうえ治療を行いますが、飼い主さまの在宅でのシャンプーやきちんとした内服管理がとても重要です。
おうちの子がアトピー性皮膚炎と診断された場合、生涯にわたり治療が必要になるため、ご家族の負担は大変かと思います。当院ではご家族の気持ちに出来るだけ寄り添い治療方針を決めていきます。