寒い季節になると猫ちゃんは飲水量が減り、尿のトラブルが多くなります。頻尿や血尿を見かけたことのある飼い主さんも多いのではないでしょうか?
特に、尿道が詰まり、尿が出にくくなる状態を尿道閉塞といいます。尿道閉塞が生じると頻尿や血尿だけでなく、尿がぽたぽた出る、排尿時に辛そうに鳴くなどの症状がみられ、さらに進行すると、尿が出なくなり急性腎不全によって死に至ることもあります。
原因
尿道閉塞の原因として、腎臓や膀胱できた結石、炎症産物によって形成される栓子、それらが通過した刺激によって生じる狭窄などが挙げられます。特にオス猫の尿道は細く、構造的に閉塞を起こしやすいと言われています。
診断
大きく膨れて硬くなった膀胱が触知できる事が多く、問診や症状も合わせて尿道閉塞を診断する事が可能です。
その後、閉塞の原因や全身状態を把握するため、血液検査や尿検査、レントゲン・超音波などの画像検査を行います。
写真は逆行性尿路造影検査により、尿道損傷と診断した猫のレントゲン画像です。
治療(初期治療、内科治療)
尿道閉塞を起こした猫ちゃんは全身状態が悪く、緊急の処置を要する事がほとんどです。まずは貯まった尿を排出し、腎不全を改善することが目標になります。
カテーテルを尿道に通し、詰まりの原因となる物質を膀胱内に押し戻すことで尿道の閉塞を解除します。注射針を腹部から穿刺し、尿を抜くこともあります。閉塞の解除後もカテーテルは数日間入れたままにし、自力排尿を確認できるまで入院治療を行います。それに加えて、急性腎不全に対する点滴治療や膀胱炎に対する抗菌薬や抗炎症薬の投与などの治療も行います。
治療(会陰尿道瘻形成術)
前述のような処置で閉塞の解除が困難な場合や閉塞を繰り返す場合には、会陰尿道瘻形成術のような外科手術により尿路を確保する事もあります。これは尿道の途中で大きな開口部を作り、メス猫の外陰部のように尿道を形成する手術です。尿道が広くなる事で結石が再発しても閉塞しにくくなります。
飼い主様へのアドバイス
猫の尿道閉塞の多くは尿路結石が原因です。特に寒い時期には飲水量や運動量が低下するため尿道閉塞が多くみられるようになります。以下のことに注意して尿石症予防をしましょう。
- 飲水量:飲水が減るとオシッコの回数や量が減り結石ができやすくなります
- 運動量:肥満もリスク要因になります
- トイレ環境:
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- 個数:多頭飼いの場合は猫の数+1が適切とされています
- 大きさ:体にピッタリのサイズよりも1.5~2倍程の物が良いとされています
- 清潔さ:トイレが汚いとオシッコを我慢したり感染性膀胱炎の原因にもなります
また、定期的な健診により尿の異常にいち早く気付いてあげることが大切です。尿石症対策の療法食に食事変更することで、尿道閉塞のリスクを減らすことも可能です。療法食は尿の性状を整えることで結石ができにくい状態にし、結石の種類によっては溶解させる効果も期待できます。
猫の尿道閉塞は症状が進行すると命の危険も伴う恐いものです。普段から猫ちゃんのトイレの様子を観察し、血尿などの異常に気付いた際にはお早めに動物病院へご相談ください。