フェレットのインスリノーマ(低血糖、ふらつき)

インスリンは血糖値をコントロールするために膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、血糖値が高いと放出され、低いと放出されなくなります。このβ細胞の腫瘍をインスリノーマと呼びます。

インスリノーマは中高齢のフェレットでは最も多い腫瘍とされ、当院でもよく遭遇する病気です。

「元気がない」「ケージにいる事が多い」「後ろ足が弱そう、ふらつく」「流涎(よだれ)」などが主な症状です。低血糖が重度になると痙攣や発作、昏睡状態に陥り、最悪の場合死に至ります。

中高齢で発症するため、低血糖によるこれらの症状を加齢によるものと勘違いしてしまい、発見が遅れる事があるので注意が必要です。


診断

フェレットのインスリノーマは非常に小さいので画像検査で検出されることは稀です。しかし、他に低血糖を起こす病気がないか確認のためにレントゲン検査や超音波検査も行ないます。

上記のような症状や低血糖を確認し、他の病気を除外する事で仮診断します。

最終的な確定診断には、開腹手術により切除した膵臓結節を病理組織学的に検査する必要があります。


治療

インスリノーマの治療は、膵臓結節の切除を行う外科治療、投薬による内科治療、食餌療法がありますが、低血糖を出来るだけ抑えることが目的となります。

内科治療

  • 食餌療法

糖分の多いオヤツや炭水化物はインスリン分泌を促進して低血糖を引き起こすのでできる限り与えないようにし、タンパク質を主体とした食餌が必要です。また一日を通してしっかり食べているかを確認し、食餌量が充分でない場合には強制給餌が必要になります。フェレットバイトも投薬に必要な際は仕方ないと思いますが、低血糖だからといって定期的に与えることはむしろ逆効果になる恐れがあります

  • ステロイド(プレドニゾロン)の投与

プレドニゾロンは肝臓から糖を作り出し、血糖値を上昇させる働きがあります。また、抹消組織での糖の利用を抑制する効果もあるとされ、継続投与する事で血糖値の安定化を図ります。あくまで血糖値を上昇させる事が目的となりますので、腫瘍自体を治す事はできません。

  • ジアゾキシドの投与

この薬は膵臓のβ細胞からのインスリン放出を抑制する働きがあります。ただしプレドニゾロンよりは高価な薬なので、食餌変更やプレドニゾロンに反応しない症例に使う事が一般的です。

外科治療

外科治療は根治的治療ではなく、内科的治療に反応しづらい症例の血糖値を安定化させることを目的としています。

手術により腫瘍の摘出を行いますが、この病気は膵臓内をびまん性に広がる傾向にあり病変部全てを切除できることは稀で、術後しばらくして低血糖がみられるようになることも少なくありません。多くの場合、症状の改善がみられ投薬の中止や減量が期待できます

残念ながら、インスリノーマは術前に腫瘍の存在を確定できない事がほとんどであり、試験的な開腹術となってしまう事を飼い主様にも理解して頂く必要があります。

また、副腎腫瘍などの他の病気の手術の際に、偶発的に膵臓の腫瘍が見つかるケースもあり、そのような場合には同時に切除することもあります。


飼い主様へのアドバイス

インスリノーマの初期症状は、加齢による変化と見分けが難しいものですが、放置してしまうと重篤な症状に陥ってしまいます。血液検査で仮診断が可能な病気ですから、異常かなと感じたら早めに動物病院へ受診される事をおすすめします。